ネット以前の買い物ってどうだった?
ロングテール理論は、ネット時代を象徴する理論として脚光を浴びました。
理論の妥当性はさておき、ネット時代でのビジネスは、それまでの時代と根本的に性質が異なっているんだ、ということを印象づけました。
経済学的な視点で言うと、サーチング・コストやマッチング・コストが驚異的に小さくなったって事ですね。
サーチング・コストというのは、自分の欲しいモノを探すための費用のこと。
マッチング・コストというのは、自分に合っているかどうか確認する費用のこと。
ネット以前の経済では、これらのコストが非常に大きかったわけです。
たとえば本を探す場合でも、ちょっと専門的な本や趣味の本になると、都会の大きな書店まで出掛けないとならなかった(サーチング・コスト大)。
そして中身やパッケージを見て、自分が欲しいものかどうか確認する必要もあった(マッチング・コスト大)。
私の場合、京都に長く住んでいましたが、武術のビデオなどを求めてわざわざ大阪の梅田まで毎月のようにでていました。
どんな本やビデオが出版されているのかは、書店が出している図書目録などを見なければならず、それがどこで手にはいるかも不明だったわけです。
ヤフオクもなかったから、定価より安く手に入れるなんて事もできませんでした。
ネットの方が便利。
ところがネット時代になって、通販専門の会社がたくさん生まれた結果、家にいながらにして、本やビデオに関しては、たいていの情報が手にはいるようになりました。
amazonでは、膨大な書物のデータベースがあって、ちょっと検索すればすぐに見つけられるようになりました。
amazonで扱っていない本やビデオでも、出版社が立ち上げているホームページを見れば、見つけることができるようになりました。
つまりサーチング・コストがもう、タダみたいなモノになったわけですね。
そして口コミやカスタマーレビューによって、本やビデオ・DVDの中身がどういうものか、大雑把に分かるようにもなりました。
これによって、マッチング・コストもかなり小さくなったわけですね。
今ではもう、駅前の大きな書店(ブックファースト)で本を探すのが、かえって面倒になってしまったくらいです。
amazonで検索した方が、在庫があるのかどうか、すぐ分かりますし、入手可能性もすぐに分かりますからね。
以前は大きな書店というと、色んな本が置いてあって便利だなあと感じていたわけですが、今は逆に大きすぎて本を探すのが面倒な場所になってしまいました。
もちろん、特定の本を探していない場合は今でも良い場所ですけれど。